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パターンを裏切れ

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From:昌子幹

「え?いや、まさか」

先日、本屋をぶらぶら歩いていたときのこと。ある文庫本のタイトル(正確には帯のキャッチコピー)が目に飛び込んできました。まったく興味のない分野の本だったにもかかわらず、そのキャッチコピーに注意を引かれ、思わず手に取って立ち読みしてしまいました。さすがに買うことはありませんでしたが、その本は僕の記憶にしばらくの間焼き付いていました。いったい、どんなキャッチコピーだったのか?それは、、、

”自転車の乗り方教本”

というものでした。驚きましたね。自転車の乗り方をわざわざ本にして販売するなんて。「そんな本が売れるのか?」と思いましたが、帯には「ベストセラー」と書いてあり、文庫本にもなっていたので、そこそこ売れたのでしょう。実際、内容もわりと興味を引かれるものでした。というのも、、、

一般的に、自転車は誰でも乗れる簡単な乗り物というイメージがありますが、実際にはそうではないらしいのです。本来「正しい乗り方」というものがあるそうなのですが、それを知らないと乗り方次第では自分の体に対して危険な凶器にさえなる、と。逆に正しい乗り方をすれば、姿勢も良くなるし、心臓も強くなり、非常に効果的な筋トレになるというようなことが書いてありました。そして、ママチャリ、マウンテンバイク、ロードバイクなど自転車の種類ごとに正しい乗り方を解説しているのです。

今まで自転車をどれだけ侮っていたかを思い知りました。そして「久々に自転車に乗ってみようかな」とさえ思ったのです。(よく考えたら我が家には自転車がないことに後で気づきましたが。)

きっと僕と同じように、思わずこの本に注意を引かれ、手に取ってみた人は世の中に少なくないでしょう。でも、なぜこの本のキャッチコピーは自転車にまったく興味のない僕の注意を引くことができたのか?それは、、、

パターンを裏切られたからです

名著「アイデアのちから」では、人の注意を引き記憶に焼き付けるアイデアの共通点のひとつとして「意外性」を挙げています。なぜ意外性が重要なのか?

それは、パターンを破るからです。人間は同じ感覚的な刺激を繰り返し受けると、それがパターン化され、注意を払わなくなっていきます。例えば、電車の車内放送や家の中の風景、書店に並ぶ本のタイトルなど、同じようなものを頻繁に見ているとそれに注意を払うことはなくなります。

逆に、そのパターンが破られると人は思わずそれに注意を向けてしまいます。次の駅でないはずの駅名が告げられたり、家のエアコンの音がいつもと違ったり、よく見るような本のタイトルとは違ったり、そこにいつもとは違う変化が少しでもあると、人間の脳は敏感にそれを察知し、注意を払うように命令してくるのです。

この性質はセールスコピーでも応用できます

言うまでもなくヘッドラインの役割は相手の注意を引き、続きを読ませることです。どんなにボディコピーでいいことを書いていても、相手の注意を引くことができなければまったくの無駄です。が、相手の注意を引くことを失敗してしまうヘッドラインは少なくありません。なぜなら、多くのヘッドラインはどこかで聞いたことがあるものばかりだからです。見込客の頭の中でパターン化されているので、注意を引くことが難しいのです。では、どうすれば相手の注意を引くヘッドラインを作ることができるか?

それは、もちろん相手の頭の中にあるパターンを裏切ることです。パターンを裏切ることができれば相手の注意を引く確率は一気に高まります。とはいえ、どうすればそのパターンを破ることができるか?いくつか方法がありますが、ベテランのセールスライターがよく使う強力な方法をひとつご紹介します。

人を惹きつけるヘッドラインの作り方

きっとあなたは、「新しいアイデアとは既存の要素の新しい組み合わせに他ならない」という言葉を聞いたことがあるでしょう。実際、ちょっとした組み合わせで大ヒットした商品は少なくありません。

例えば、例えば鉛筆と消しゴム、自転車とエンジン、いちごと大福、トンカツとカレー、、、などなど数え上げればきりがありません。とはいえ、単に組み合わせればいいというものではありません。とりわけ、大ヒットを生むアイデアであれば、既存の要素の組み合わせに加えて、もうひとつ重要な要素が必要になります。それが「不調和」です。

世界トップセールスライターの一人、ジョン・カールトンは人を惹きつけるヘッドラインのアイデア(彼は「フック」と言っています)を作る天才と呼ばれていますが、彼は優れたフックを作る最大のコツを、、、

人の心をつかむ要素の不調和な組み合わせである

と言っています。例えば、彼の最も有名な広告のヘッドラインに「片足のゴルファーが発見した飛距離を50ヤード伸ばす方法」というものがあります。これは「片足のゴルファー」と「飛距離を伸ばす」という通常ではありえない組み合わせです。ですが、この組み合わせによって読み手の頭の中のパターンを破ることができたのです。他にも、、、

「怠け者がリッチになる方法」
「弱い馬に賭けてレースで勝つ方法」
「痛みで足を引きずっている男が、毎朝2キロ走っている」

などなど、大ヒット広告のヘッドラインには不調和な組み合わせが使われているものが少なくありません。

冒頭の「自転車の乗り方教本」もまた、「自転車の乗り方」と「教本」という不調和な組み合わせでした。「自転車の乗り方を本にして売れるわけがない」という僕の思い込みを打ち破ったのです。

このように、見込客にとって「不調和な組み合わせ」をもとに強力なヘッドラインを作ることができます。その結果、その商品に興味のなかった見込客でさえも引き寄せ、興味を持たせることも可能です。

ただし、意外性ばかりを追求するとただの奇をてらっただけのヘッドラインになってしまうので注意が必要です。極端なことを言えば「片足の税理士が見つけた税金を50%節約する方法」といった無意味なヘッドラインができあがってしまいます。カールトンが言っている通り、それは「人の心をつかむ要素」でなくてはなりません。

また、当然のことですが注意を引いただけでは意味がなく、相手に興味を持ってもらい、欲求を起こさせる必要があります。そのためには、見込客がどんな欲求を持っているのか?何を常識だと思っているのか?どんな思い込みがあるのか?をしっかりリサーチすることが最も重要であることは言うまでもありません。

昌子 幹

BtoBからBtoC、国内から海外に至るまで15年以上にわたって営業とマーケティングの経験を積む中、ある時ダイレクト・レスポンス・マーケティングとセールスコピーの重要性に気づく。独学で勉強を進める一方、当時たまたま募集をしていた小川忠洋主宰のセールスライターを養成するコーチングプログラム「パートナー養成講座」に参加。その4カ月後にはセールスライターとして最初の仕事を獲得し、会社に勤める傍ら副業で活動を開始。間もなくセールスライターとしての仕事が急増し、収入も本業を大きく超えたためセールスライターへと完全に転身。現在は【ザ・レスポンス】でプロモーションの企画とセールスライティングを担当。

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