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「モノ」が売れなくなった時の処方箋

2017.7.29 | ,
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From:藤岡将貴

1990年代後半を大学生として過ごした僕は、CDがメチャメチャ売れたこの時期を、余りある時間と、バイトで稼いだ高校生時代の小遣いの何倍ものお金と共に過ごすことができました。間違いなく、今までの人生でもっともお金と時間を浪費した時期だと断言できますが(笑)、その一方で、今でも時代時代のヒット曲を聞いて一番思い出が蘇ってくるのも、この1990年代後半です。

当時はCDが100万枚とか200万枚とか普通に売れてたCD黄金期。iPodもiPhoneもなかった時代なので、TSUTAYAでCDを借りて、それを自宅の大きなスピーカーのついたコンポで聴く。お気に入りの曲はMDに焼いて車で聴く。そんな時代でした。でも今では、コンポなんて家電量販店に行っても見かけません。我が家にもiPhoneとBluetoothでつながる小さなスピーカーがあるだけ。そして、音楽はiTunesでダウンロードしたり、Spotifyで無料で聴く時代。すっかりCDを借りたり買うこともなくなりました。テレビの音楽番組もすっかりなくなりました。ファンを除いて今でも音楽CDを買う人はいるのでしょうか?

ちょっと気になったので、音楽CD全盛期の1995年のCDシングル売上ランキングを見てみると、1位は「DREAMS COME TRUE」の「LOVE LOVE LOVE」で235.2万枚。トップ28位までが100万枚を超えていました。一方、昨年2016年のランキングを調べてみると、、、1990年代当時、ヒット曲の基準として言われていた「100万枚」を超えているのはAKB48の4枚のみ。28位ともなると、わずか21万枚。シングルCDの年間販売数は、1997年の1億6782万7000枚をピークに下降線を辿り、2009年には4489万7000枚と、ピーク時の4分の1ほどに落ち込んでいます。今は「CDが売れない時代」とはよく聞きますが、実際にこれだけCDの売上が減っていれば、コンポなどの音響機器やCDレンタル業にも大きな影響がありそうです。

レンタル事業が落ち込んだ「TSUTAYA」が向かった先とは?

実際、日経ビジネスの記事によると、CD・DVDレンタルで有名なTSUTAYAは、今、ある業態へシフトチェンジしているそうなんですが、、、あなたはご存知ですか??TSUTAYAはCD・DVDのレンタルビジネスからリアルの小売業へのシフトチェンジを図っているようなんです。

例えば、今年4月14日に家電量販店大手のエディオンとフランチャイズチェーン(FC)契約を結び開業した「エディオン蔦屋家電」や、2011年12月にオープンした、カフェ、書籍、レストラン、ペットサービス店などを融合した商業施設「代官山T-SITE」など。これまでの単なるレンタル店から、書籍やカフェ、家電との「大型複合店」として集客力を高めようとしているようです。

その理由は?と言うと、やはりレンタル事業の落ち込み。レンタル日本映像ソフト協会によれば、レンタル市場は2007年の3604億円から2016年には1831億円と半減。おそらく、DVDはネットフリックス、音楽CDはiTunesやSpotifyなどのオンラインサービスの台頭による影響が大きいでしょう。

"モノを売るのではなくライフスタイルを売る"

とはいえ、小売業として普通に商品を販売するだけなら、Amazonなどネット通販の圧倒的な品ぞろえに勝ち目はありません。そこで、「ただの小売業」ではなく「ライフスタイルを売る小売業」へと変わろうとしている、ということなんです。TSUTAYAを運営しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の増田社長は日経ビジネスの記事の中で、”モノを売るのではなくライフスタイルを売る”と語り、CCCとの提携で「エディオン蔦屋家電」を出店したエディオンの久保社長は”家電業界で同じことをやり続けていてはシェア拡大を望めない。価格競争だけでは疲弊することは自明だ。今までのような目的買いではなく、まず来てみたくなる店を目指した”と言っています。

このように、ただ「モノ」を販売しているビジネスの場合、競合が増えて業界が大きくなるにつれて、価格競争になって生き残るのが難しくなってくるでしょう。また、ネットフリックスのような技術革新で淘汰されることもあるかもしれません。事実、アメリカでは、全米で9000店舗(TSUTAYAの6倍以上)、従業員6万人と、レンタルDVD市場大手の「ブロックバスター」は、ネットフリックスをはじめとするインターネット配信に対応できず、2010年に倒産に追い込まれました。

こんなことは、今後あなたのビジネスでも100%起きないとは言い切れないかもしれません。その時の1つの打開策が、ライフスタイルを売ろうとしているTSUTAYAのように「モノ」ではなく「コト」や「体験」を売ること、と言えるのではないでしょうか。

「ハンディカム」「セレナ」が売った「コト」とは?

「コト」や「体験」を売る例としては、例えば、ソニーのビデオカメラ「ハンディカム」はかつて、「運動会をビデオに撮ろう」というメッセージのCMを打ち出しました。ビデオカメラそのものを売るのではなく、ビデオカメラを使って父親が我が子の活躍を動画として一生残す「コト」を売りました。他にも、日産の自動車「セレナ」はテレビCMで「ものより思い出」というコピーを使いました。親の目線で、子どもと旅行に出かけて、いろんなことを感じて欲しい、という「体験」を売りました。これらのCMを見て、ハンディカムやセレナを買おうと思った父親は結構いるのではないでしょうか?

このような、「コト」や「体験」を売る広告は、市場の中の他の商品が価格や機能・性能で勝負している中で、まったく違う土俵で戦うことができると思いませんか?では、こういった「コト」や「体験」を売るセールスメッセージを作る時に考えるべきことはなにか?僕が感じた2つのポイントをお話しします。

①見込み客をセグメントして考える

これは、「コト」や「体験」を売るセールスメッセージに限った話ではありませんが、基本的に見込み客をセグメントしたメッセージの方が、相手に自分ごとだと感じさせて、惹きつけることができます。例えば、僕たち【ザ・レスポンス】の場合、主な読者やお客さんは「社長」と「セールスライター(セールスライターになりたい人)」です。この人たちにセールスライティングの商品を売る場合は、「社長」と「セールスライター」で異なるメッセージを書くわけです。それはそうですよね?セールスライティングを学んで得たい「コト」「体験」が、両者では異なるからです。ダン・ケネディは「セグメントすることで顧客リストの価値を最大化できる」と言っています。つまり、100の顧客リストを十把一絡げに扱うのではなく、セグメントすることで、100以上の結果を得ることができる、ということなんです。

②具体的なシーンをイメージさせる

「コト」や「体験」を売るわけですから、見込み客に具体的なシーンをイメージさせるのが一番です。①で決めたセグメントごとに、売りたい具体的なシーンを考えます。「ハンディカム」なら運動会、「セレナ」なら子どもが田舎の温泉や市場で楽しんでいるシーン、ですね。では、見込み客が自分を重ねてしまう、感情移入してしまう、そんな具体的なシーンをどうやったら知ることができるのでしょうか?

1つは、実際のお客さんの使い方や変化の様子を見ることです。商品を買っている場面ではありません。例えば、ビールの場合、スーパーで買っているのは奥さんですが、自宅で飲んでいるのは旦那さん。で、メッセージで売りたいのは、旦那さんがお風呂上がりに奥さんが出してくれたビールを飲んでサッパリしている様子、だったりするわけです。治療院やエステサロンでしたら、治療後に自宅や外出先で今までと違う変化を体感しているシーンでしょう。実際にあなたが商品やサービス購買後のお客さんの姿を見させてもらうことで、それを知ることができます。

もう1つは、考えることです。実際にお客さんの使い方や変化の様子を見ることが難しくても、ある程度は自分で考えることもできるはずです。考える時に使えるフレームワークが「5W1H」です。「なにを」「いつ」「誰と」「どこで」「どのように」「なぜ(どんなコトが欲しくて)」の切り口で考えると、イメージしやすいでしょう。

さて、あなたのビジネスでは見込み客にどんな「コト」「体験」を売ることができるでしょうか?「コト」「体験」を売ることは、見込み客の感情を刺激して売ることなので、これがうまくいけば、「モノ」を売るよりも、もっと大きな反応を得ることができるでしょう。ぜひ、考えてみてはいかがでしょうか?

-藤岡将貴

藤岡 将貴

大学卒業後12年間、システム・エンジニアとして自社開発プログラムの企画・開発に従事。その中で、いかにして商品を売るかを模索してきた中で、セールスライティングの技術にその可能性を感じ、【ザ・レスポンス】の「12週間セールスライティング通信講座」でセールスライティングを学び始める。その後、2013年に第1期メンバーとして参加した「セールスライター養成講座アプレンティス」をキッカケに、翌2014年にダイレクト出版に入社。寺本隆裕の監訳本のPPC広告担当を経て、現在は、ダイレクトメールの企画・作成を主に、プロモーションの企画とセールスライティングを担当。

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