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なぜ伝えたいと思ったのか

From:池本克之

僕は数年前までは、父に対してずっと「箱」に入っていた。何年も何十年も「箱」から出る気もなかった。ところが、「箱」の話を知って「箱」から出て父と接することができるようになった。しかし、いまでも時々「箱」に入る時がある。最近では、健康状態が良くなかった父が具合がいいというので、温泉旅行に連れていったら「移動するのもしんどい」と言う。「じゃあ、来る前に言ってよ。帰りはどうすりゃいいんだ!」。
楽しんでもらいたいと思ったのに、なぜ余計なことを言ってしまったのか。
「箱」からすぐに出る術を知っていてよかった。

大事なことを忘れていた

そもそも、なぜ「箱」の話を伝えたいと思ったのか。大事なところをすっ飛ばしたままだったので、今日から2週にわたってはそこを話すことにしよう。
学生から社会人になった僕は、何も考えず、「ただなんとなく」働き始めた。
時代は昭和から平成へ、バブル時代というヤツだ。
「誰が何をやってもうまくいく」とみんなが浮かれていたのだから、時代には合っていたのかもしれない。「ただなんとなく」でも楽々と生きていける浮かれた時代だった。

火がついた

就職して社会の競争にさらされると、今度は自然に負けん気が湧き上がった。 もっと稼いでやる、もっと偉くなってやる、もっと大きな仕事をやってやる。誰とでもを勝負して勝ってやる。強く強く本気でそう思って、本当に行動した。始発で出勤して、終電で帰る。そんな生活を何ヶ月も続けた。それ自体、苦しくも辛くもなかった。自分で望んでそうしているのだから。

しかし、苦しさは別なところにあった

勝つためには当たり前だと、目の前の仕事は何でも引き受けて、他人に手を触れさせるのも頑なに拒んだ。これはオレの仕事だ。全部オレがやって結果を残すんだと強がった。
やがてビルの管理会社から苦情が出た。「土日も関係なく、同じ社員が早朝に来て、深夜に帰る。オタクの会社はオカシイんじゃないか?」その日から早出、残業、休日出勤を禁止された。特に、上司には悪いことをした。管理不行き届きだと会社から大目玉を喰らった。今度は僕が上司に呼び出されて、こっぴどく叱られた「オマエやりすぎだ」。

次に行動したこと

それならばと今度は勉強に精を出した。出勤できない時間は勉強時間に充てて、暇さえあれば本を読み、せっせとセミナーに通い、手当りしだいに資格を取った。それが残された勝つための戦略だと思ったから。しかし、どんなに働いても、どんなに勉強しても変わらないことがあった。同僚や部下との関係がうまく作れないのだ。実は勝ちたい一心だからなのだが、どんな仕事も引き受けるし、結果も出すので上司からはウケがいい。取引先にも可愛がられる。比例するように同僚からは疎ましい存在になった。部下にももっと働け、もっと勉強しろと強制するので、うるさい上司、厳しい上司なので嫌がられるわけだ。

振り返ってみると

学生時代から勝負がかかった競争の場面ではいつも同じだった。例えば部活でも、チーム中では異質で、浮いた存在、チームメイトとのちょっとした対立がいつもあったことに気がついた。どこかチームに溶け込めない自分がいたのだ。数十人のチームから、数百人の会社組織を経営する立場になっても疑問は深まるばかりだった。

「なぜ、誰とでもうまく関係を作ることができないのだろうか?」

ビジネスを大きくすることはできても、組織の中に敵を作ってしまう。本当は成果を出し、会社とお互いの成長を称え合える仲間が欲しかった。心底腹を割って話し合える仲間が欲しかった。僕個人の仕事の質や量の問題ではなく、知識や技術の問題でもないことはわかっていた。なぜなら、どんなに働いても、勉強しても同じことが、うまくい関係を作れないことが何度も繰り返されてしまうのだから。

では、根本的な原因はどこにあるのだろう?

言ってみれば、心の隅でホコリにまみれたまま、ほったらかしにしたもの。たとえ思い出したとしても触りたくない汚れたもの。例えば、汚い瓶に入った謎のビンテージワインのようなものだ。もしかしたら、生きているうちは飲めないのかもしれないとさえ思えた。
「箱」の話を始めて聴いた時わかったことがある。ワインの中身は腐ってなんかいなかったのだ。
ワインを棚から取り出して、ホコリを拭いて、ゆっくりとグラスに注いでみる。それをしなかっただけなのだ。そこにあることを気づいているのに、気づいていないフリをしてやり過ごそうとする。それが、気づいてもらえない自分を作り出し、孤独が自分を苦しめていたのだ。つまり、原因は自分にあったのだ。

- 池本克之

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コメント

  1. わんぱんち さんのコメント: 2010/08/02 03:44

    自分の価値観と相手の価値観を合わせることは
    非常に厳しいことですね

    相手と上手くやっていきたいのなら、
    相手の価値観を分かって、
    そういうものなのだと受け入れる

    私も人付き合いが得意ではないのですが、
    自分の将来を考えたら、
    やはり人付き合いは大切だなと
    実感することが多々あります

    これからはもっとコミュニケーションをしっかりとり
    より円滑な人付き合いをしようと思います

    ありがとうございます

  2. 石川 さんのコメント: 2010/07/28 09:46

    どんな人も壁と戦って現在があるということを感じることができました。
    苦しいからと逃げるのではなく
    しっかりと向き合う!
    私も向き合っていきたいと思います。

  3. 斉藤貴之 さんのコメント: 2010/07/27 15:38

    とても共感します。

    僕は営業畑一筋で仕事をしていたので、
    以前は常に自分だけが突出した存在で
    ありたいと肩肘を張っていました。

    ある意味、自信を持てるものが無かったので、
    お山の大将でいたかったのだと思います。

    完全歩合の会社ばかりでしたので収入的には
    問題は無かったのですが、本当の意味での
    仲間は全くいませんでした。

    今でも、ネガティブシンキングの人とは
    付き合いませんが昔よりは柔軟になったとは
    思います(笑)

    僕の場合は、付き合う人を変える・・・
    という選択をしていますが、これもいわば
    箱に入っているという概念なのかも知れません。

    次回も楽しみにしています・・・

  4. 簔毛 さんのコメント: 2010/07/27 11:21

    池本さんおはようございます。

    ようやく『箱』の真相を話してくれますか?!

    次回、次回と言って、なかなか『箱』の話をしてくれないので、
    僕が『箱』に入ってしまいました(^^;

    使い方あってますかね?

    そろそろ、僕をそんな『箱』から出す方法を教えてください(∩.∩)

    楽しみにしてますね。

  5. たけだようこ さんのコメント: 2010/07/27 10:24

    ステキなお話をありがとうございます。

    私はセラピストを職業にしていて、心理学の学びはおそらくこれからも
    ずっと続くであろう立場の人間なのですが、

    心理学用語でいうところの、インナーチャイルドを
    ビンテージもののワインに例えてお話されるのを聞いたのは初めてです。

    しびれました♪

    お父さまとの関係はこれからどうなるのかは分かりませんが、
    きっと、お父さまの今の状態は誰のせいでもなく、お父さまが
    歩んでこられた軌跡の続きとしてのあり方なのだろうと思いました。

    また、遊びにきます。

  6. JOEY さんのコメント: 2010/07/27 10:18

    自分の小さな箱から脱出することが大切なのですよね。

    自分が箱に入っていると気付いた時には、すでに抜け出ている。

    私も毎日箱に入っている自分に気付かされます。

  7. 窪田 さんのコメント: 2010/07/27 09:40

    池本様

    本日の記事は共感するところが多々ありました。

    次回の更新を心待ちにしています。

    窪田

  8. 湯浅庄平 さんのコメント: 2010/07/27 09:01

    だからそろそろ「箱」の真実を、本当に伝えたかった事を話そうと
    決めたんですね。。このままでは、ただの「箱」に入った”池本”で
    終わってしまいそうだから、、俺たちもそうならないようにと。。

    どうやって、、父との関係を取り戻せるのか、、箱から抜け出す、
    その方法は簡単で、受け入れること。しかないと思いました。。

    でも、「優しく、過去なんかすてて」受け入れるってことです。
    今日は少し、池本さんの苦しみを救えた、共有できた気がしました。

 
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